夏の風物詩といえば怪談。
今夏もMYHOSでは、現役ホストから集めた選りすぐりの恐怖体験記を紹介していきます。
結局、1番恐いのは人間だよね…
「僕はもう死んでいるのかもしれない」
ALPHABET イオン
5年ほど前になります。
よくお店に遊びに来てくれるお客様とディズニーランドに行くことになりました。
いつもお店に遊びに来てくれるだけに、この日はなにかプレゼントをしたくて、何でも欲しいものを買ってあげることにしたのです。
彼女が選んだのは特大のくまのぬいぐるみ(8万円)。値段にも若干の怖さを感じるところではありますが、日頃の感謝も込めて笑顔で購入し手渡すと「会えない時はこれをイオンくんだと思って寂しさを紛らわせるね」なんてカワイイ事を言っていましたね。
しかし、しばらくすると、僕も忙しくなり、以前に比べて合う機会が激減してしまっていました。
そんなある日、久々にその子の家に遊びに行くことがあったのです。
前に比べて、なんだか“一緒にいても楽しくないな”なんて感じながらも過ごしていました。
その日はDVDを観て、そのまま寝落ちしてしまったのですが、夜に「タンッタンッタンッ」という音で目が覚めました。
しかし、そのまま再び眠ってしまい、目が覚めるとすっかり日が昇っていました。
その子は既に仕事に出てしまった後で、テーブルには回鍋肉弁当と置き手紙が。そこには“温めて食べてね”と。
その弁当を食べながら、なんとなく壁に目をやると、そこに無数の穴が空いていたんです。
特に気にすることなく、その穴を触りながら“すごいボコボコしてるな”程度に思っていました。
それからまたしばらくすると、その子のレスが悪くなり、返事もそっけない感じに。
理由も聞いても何でもないと答えるだけ。
ただ、少し気になって、その子のTwitterを覗いてみるとそこには僕がプレセントしたくまのぬいぐるみが、無残な姿になって投稿されていたのです。
切り刻まれ、中の綿がほとんど飛び出している状態…。そして、そのままスクロールしてコメントを見て背筋が凍りました。
どうやら、僕が泊まりに行った時に、寝ている僕を刺そうとしていたみたいなのです。
しかし、直前で踏み止まりぬいぐるみにその刃が向いたというわけです。
あの夜に聞いた「タンッタンッタンッ」という音は、ナイフを突き刺している音だったのです。
あの穴もその時に出来たものだったというわけです。自分が死んだことに気づかない人が霊になると聞いたことがあるのですが、僕はもしかしたら、既にこの世の者ではないかもしれません。
「にゅるっ」
もう8年前になりますか。
深い仲になった女の子がいるのですが、その子は感情のコントロールが若干人よりも過激で、お腹が減ったら、すぐその場でお腹がいっぱいにならないと気が済まなくなり、それが叶わないとヒートアップして、最終的には自傷行為に走ってしまっていました。
僕は元々マイペースなのもあり、度々ぶつかってはいたんですよね。
そんなある日、その子と一緒に出かけることになっていて、僕の準備はすぐに終わり、その子を待っていました。
5分10分と経っても終わる気配がなく、だんだんと僕の「早くして」の口調も強くなってしまっていたのです。
その子の返事からもイライラ感が混じり始め頃、その子が化粧してるところに行き、「ほら、もう行くよ」と何気なく腕を掴むと“にゅるっ”と滑ったのです。
そしてその手を見ると血だらけ。
その子は、化粧をしながらずっと腕を切っていたようで、それがいつもより深く切っていたみたいで、血が滴っているほどでした。
当然、その日のデートはなくなりましたが、あれから数年経ったいまでも、あの“にゅるっ”の感触は忘れられません。
「ゲームはほどほどに」
あれは2018年のワールドカップで世界中がサッカー熱で盛り上げっていた頃でした。
僕もその影響を受けて、ここちゃん(森永ここあ)と毎日のようにサッカーゲームをしていたのです。
同じ頃、深い関係にあった女の子とはお互いの家を行き来するほどだったのですが、サッカーゲームがもの凄く楽しくて、その子との時間が激減していったのです。
しかし、そんな日々が続いてしまい、さすがに悪いなと思い、久々に遊びに行く計画を立てることに。
その子は本当に喜んでくれて、僕もやるからには思い切り楽しもうと、高級飲食店やチームラボの施設など行けるように手配したのです。
デート当日、ここちゃんから「ウイイレやらん?」という1本の電話が。
この悪魔の誘いは思いの外強力で、二つ返事で「やろう」と答えてしまったのです。
その時の僕らのゲームレベルは熟成しており、難易度MAXでも勝ててしまうほどで、ここちゃんとの絶妙なパスワークからの攻撃は、誰にも止められないほどでした。
ここちゃんが僕の家に来て、すぐに僕らのワールドカップが始まり、気がつくとあっという間に時間は過ぎていったのです。
そして数時間後、鳴り響く電話で気づいたのです。とっくに待ち合わせ時間を過ぎていることに。
今から準備して、待ち合わせ場所に行く時間を計算したところ、“なんかヤダな”と思ってしまった最低な僕はLINEで“今日は止めておこう。ごめん”と送り、再びここちゃんとゲームをやり始めました。
サッカーで言えば完全なレッドカードです。
そして1時間ほど経った頃、インターホンが鳴りました。
完全無視の僕を不思議そうに見ているここちゃんに、事情を説明すると「行けよ」と言ってくるものの、もはや行く気は全くない僕は居留守を使うことにしたのです。
すると今度はオートロック側ではない、玄関の方のインターホンが鳴ったのです。
やばい、すぐそこまで来ているとわかった僕はすぐに電気を消しました。
しかしこれがまずかったのです。のぞき穴から急に電気が消えたことがわかったその子は、トントンと玄関を叩き始めました。
それでも応答しないと今度はものすごい大きな音でガンガンと叩いてきたのです。
ここちゃんを見ると震えているじゃありませんか。
5分ほどその音は続いていたのですが、ここちゃんに後ほど聞いたら体感的には7時間ぐらいだと言っていましたね(笑)。
だんまりを決め込んでいると、ようやくその音もなくなり、玄関の前から人の気配が消えたので恐る恐る玄関を開けると、そこに人の姿はありませんでした。
ただ、このままではゲーム続行不可能だと思ったので、今度はここちゃん宅に移動し2回戦をやることに。
その間もずっと電話とLINEは鳴りっぱなしでしたが、華麗にスルーを決め込み続け、結果そのまま寝落ちしてしまうほどゲームをしてしまったのです。
目が覚めると約束の時間から1日半が経っており、見たこともない不在着信件数とメッセージがスマホに表示されていました。
そして家に帰る道中、満を持して返信「もうなんかいいわ」と。はい、最低です僕は。
すると意外なことにその子からは「ごめんね」と返ってきたのです。
まだ大丈夫だと確信した僕は、すかさず「じゃあ仲直りしよう」と次の一手を繰り出したのです。
家に着くまでの間に、どうにかその子と仲を取り持つことが出来ましたが、玄関は予想以上にボコボコになっていました。
横には消化器が転がっていたので、おそらくこれで叩いていたんでしょう。
そして、そのまま玄関を開けると、そこには無言で洗濯物を畳んでいるその子がいたのです。
開けてから閉めるまでのスピードはこれまでにないほど早く、その後のダッシュも陸上選手も驚愕する速さだったと思います。
後日、どうやって家に入ったのかと聞くと、僕らがここちゃんの家に行ったタイミングで鍵屋さんを呼び、住人のふりして開けてもらったとのことでした。
さすがに合鍵を無断にゲットされてはこの先は無理だと判断した僕は早々に引っ越すことにしました。
長いホスト人生、これらの体験は氷山の一角で、話は7万個以上ありますよ。今度、You Tubeで流そうかな(笑)