夏の風物詩といえば怪談。
今夏もMYHOSでは、現役ホストから集めた選りすぐりの恐怖体験記を紹介していきます。
結局、1番恐いのは人間だよね…
「家に侵入したもの」
Dewl 秋
その日僕は営業後、いい感じに酔ってふらふらと帰り道を歩きました。
何事もなく家に着き、いつものように鍵を開けて部屋に入りました。
当時6月の梅雨とはいえ蒸し暑く、むわっとした湿っぽい空気が僕を包みます。
着ていたシャツが肌に張り付くような不快感を払拭すべく、帰り道にコンビニで買ったお菓子を開け、冷蔵庫で冷やしておいたジュースで喉を潤し、至福の一人時間を味わっていた時のことです。
突如髪を振り乱した女の子が部屋に入ってきて、ズカズカとこちらに迫り、刃渡り18センチほどもある包丁を突きつけてきたのです。
僕はあまりの光景に言葉を失い、数秒ほどその子と見つめ合ったまま時が止まったように呆然としていました。
女の子の目は視点が定まっておらず、どこか虚ろな表情をしています。
その日来ていなかった姫だと、そこで気づきました。
僕は青ざめて何を言ったかも覚えていませんが、とにかく落ち着くよう説得し、なんとか部屋の外に出て行ってもらいました。
玄関の鍵を閉めてからもドアをバンバンと叩いたり蹴ったり、叫んだりしていましたが、警察を呼んでようやく大人しくなりました。
どうやら営業終わりの僕を尾行してアパートまでついてきたようです。鍵を閉めない癖はこの日以降なくなりました。