企画

頂の師弟対談 しぶなつ×降矢まさき

FUYUTSUKI-PARTY- 降矢まさき 渋谷奈槻

2021年にホスト業界に衝撃が走った。
冬月グループ『FUYUTSUKI-PARTY-/-KARMA-』のプロデューサーであり冬月グループ 執行部取締役・降矢まさきが、5億2000万overを達成して、ホスト史上最高の年間売上記録を更新し“日本一のホスト”の栄冠を獲得したのだ。
まさきが師匠として仰ぐのは、同店で社長を務める渋谷奈槻で、かつて3億3000万overを叩き出して、当時のホスト日本一だった男である。
今回、師弟揃ってホストの頂点に輝いた2人による、SPECIAL師弟対談が実現。
師匠から弟子へと引き継がれたモノとは何か?
そして、頂上を経験した男達が見る世界とは……

FUYUTSUKI-PARTY- 降矢まさき

5億2000万を稼いでも実感したのはほんの一瞬

――まさきさん、ホスト業界の年間売上の更新、5億2000万達成おめでとうございます。まずは今の率直な感想を教えてください。
まさき●ありがとうございます。「ホストをやってきて良かったな~、達成したな~」って感想はありますが、それは2021年の記録で、今年(2022年)になったら、ホストはまたゼロからスタートなので、そんなにいつまでも浮かれてはいられないですね。だから大晦日の夜なんかは「もうすぐ俺の年が終わっちゃうのか……」って、悲しみに浸っていましたから(笑)。

――それでも日本一に輝いたという実感や優越感はあったのではないですか?
まさき●正直、実感があったのは1日だけ。締日が終わり、結果を聞いて、大掃除をしているときに「日本一か…」ってやっと思えて。
その後、車で実家に帰る道を運転している最中に、地元の街を見て「ちっちぇ街やな」って変な感傷にふけったぐらいかな(笑)。
事前になつきさん(渋谷奈槻)から「年が変わったらゼロからスタートで、日本一はほんの何日間だけだから」って言われていたので、その通りになったなって感じです。

――奈槻さんとしては、まさきさんの記録をどう評価しますか?
奈槻●まさきに対しては、もう上司・部下という役職上の関係をとっくに超えているので、ただ素直に「稼げて良かったね!」と。
まあ、俺の記録もいつかは誰かが超えると思っていたし、まさきにもワンチャンあるだろうなって。
まさき●ワンチャン頂きました(笑)。でもそれは、3億3000万を稼いだなつきさんの背中を見ていたからできたことで。
それがなければたぶん無理だっただろうな…。

――まさきさんはたしか、ツイッターで弟子募集をしていたと思いますが?
まさき●そうですね。そこに来たホスト達にハッキリと言うのは「5億2000万の稼ぎ方は教えられないけど、その背中を間近で見せることはできる」って。
そもそもホストの技術って教えられることに限界があって、あとは背中を見せるしかない。
稼げる人の価値観に触れて、自分もそうならない限りは上には近づけませんよ。

――まさきさんも奈槻さんの背中を見てきたと思いますが、教えるというよりも、近くで盗んで欲しいという感じですか?
まさき●そういうことです。
奈槻●まさきと俺との関係も、束縛が発生するような堅苦しい師弟関係ではなく、同じ戦場で戦う同士というニュアンスの方が近いかもね。

FUYUTSUKI-PARTY- 降矢まさき
――日本一になったホストが見る世界というのは、どういう光景なのでしょうか?
まさき●自分がめちゃめちゃ小さく感じましたね。
初めて1億売ったときは「俺、頑張っているな!」ってテンションだったけど、5億を超えたときはなぜか世の中と比較していました。
と、いうのは世間には、余裕で5億を稼げる人がいます。
歌舞伎町という小さな街だけで勝負をして、勝った気になるのはどうなのかなって。
奈槻●日本一を経験すると、やっぱり価値観は変わるよね。俺が3億3000万売れた要因は、周りがホストを辞めていく中、俺だけが続けていただけだから。
ずっと続けていたら、いつかはチャンスが来るんだよ。そのチャンスが、俺の場合は10年以上かかったけど、まさきの場合は7~8年で来たっていうことだけ。でも本当に良かったね。おめでとう!
まさき●ありがとうございます。

――今回は師弟対談というテーマですが、そもそもの二人の出会いを教えてください。
まさき●7~8年前だったかな?体験入店した際に、店の奥に行ったらキッチンでなつきさんが歯を磨いていた(笑)。
それが初対面の瞬間!
奈槻●あったあった。「雑誌のホスト募集広告を見て来ました」って。最初から良い奴だな~って思ったね。

――まさきさんは、奈槻さんの凄さにすぐに気が付いていたのですか?
まさき●そうですね。そのときから周りのホストとは目や雰囲気が違っていました。
他のホストは僕がイメージしていた通りのホストだったけどなつきさんからは、それとは違うものを感じていたので。
そこで勘が働いたのかな!
奈槻●たぶんそのときは自己洗脳MAXだったので、デビルみたいな状態だったのかもね。
ある意味、何かに憑りつかれていたから、ただならぬ雰囲気は出ていたかも(笑)。
「寝ない」「食わない」とかなり尖っていた時期だったなぁ~。
まさき●当時はなつきさんがお客様を呼ばないと回らない店でしたからね。まさにお店の命運は、なつきさんにかかっていました。。

――まさきさんに対して、最初の頃の印象は?
奈槻●まさきはとにかく優しかった。ホスト以外の仕事もしていたから知識量もあって、俺の知らないことをいろいろ教えてくれた。
おまけに自己犠牲の精神も強くて、他人の為に動く側面もあった。俺には得るものしかなかったね。
まさき●プライベートでもいつも一緒だったな~。
奈槻●そう言えば原宿はよく行ったよね。
まさき●行った行った。で、4時間以上歩いて何も買わずに見てるだけ(笑)。
でも、あのおかげで痩せた。当時はお互いに食べないことに命をかけていたので、買い物しかすることがなくてね。
奈槻●うわ~、懐かしいわ~(笑)。

FUYUTSUKI-PARTY- 渋谷奈槻
――師匠である奈槻さんから、まさきさんは何を教わっていたのですか?
まさき●う~ん、一番はリスクヘッジかな。これから起きることを、良いことも悪いことも含めて事前に教えてもらっていたので。
例えばそうだな「人はどうせ消えるから」とか。
奈槻●それ、よく言う(笑)。
まさき●最初聞いたときは「そうなのかな~」くらいの感じで頭では覚えていたんですよ。
でも実際にホストをしていると、頑張って尽くしたお客様が急に消えたり、可愛がっていた後輩が裏切ったり…。
そんなときに「これがなつきさんが言っていたことか」ってやっと腑に落ちた。
奈槻●そうそう、そういうこと!
まさき●必要以上に人を信じたら損をするので、最初からそのスタンスで行けよって。
それは結局、僕の心を守るためのアドバイスになっていて。
僕はよく「まさきさんってメンタルが強いですね」って言われるけど、それはなつきさんから事前にアドバイスを受けていたから。
先に答えを教えてもらっているので、無駄に落ち込まない。だから、“なつきさんの言葉は二度響く”わけ!
奈槻●俺としては、とくに教えていたという感覚ではなかったけどね。
「こうしろ!」なんて強制は絶対にしないし。それに何か言ったとしても、出来る人と出来ない人がいるからね。
そもそも「寝るな!食うな!」って言っても、本気でやる人は少ないじゃん。
そもそもの話、1億稼ぐにはそれ相応の対価が必要なの。ホストは仕組みで稼ぐわけではないので、完全に労働対価だよね。

――そう考えるとお二人は日本で一番、労働に対する対価を払ったホストってことですね。
奈槻●そうそうそう! 俺らは細かく労働しただけ。裏ワザとかはないの。

――他にも、具体的な行動で何か教わったものはありますか?
まさき●同業への行き方かな。お店に行ったらすでにファーストオーダーがされていて、席に着いた瞬間にコールが始まる。
しかもお会計はすでに済ませてあって、5~10分程度でサッと帰る。
お店に負担や迷惑をかけずに義理だけ通す…。この同業への飲み方はカッコいいなって。
これは今でも真似しているし、後輩にも教えています。
奈槻●そもそも俺、同業って好きじゃないんだよね。だからすぐに出たいの(笑)。
まさき●もちろん知っています。でも僕はあれを美学だと思っているので(笑)。

――まさきさんにとって、奈槻さんのホストの魅力とは?
まさき●媚びないところ、流行に敏感なところ、そして誰よりも捨てる覚悟があるところ。
とくに捨てる覚悟が凄い。普通、歌舞伎町ってお客様の取り合いでしょ。なつきさんの場合、お客様はもちろん大事にするけど、変に依存しないので囚われない。
だからこそ新しい人が常に入ってきて、飽きずにホストをやっているってイメージかな。
奈槻●俺はさ、過去の女の子が昔を振り返ったときに羨ましがるような男になりたいんだよね。
「アイツ(奈槻)はレベルが下がった」とか思われるのが嫌なだけ。

――逆に奈槻さんにとって、まさきさんのホストとしての魅力は?
奈槻●緩急がすごいところかな。野球で例えたら、ストレートと変化球を持っているイメージだね。
まさき●正直に言うと、僕ってずるい部分があるんですよ。
計算高いとかではなく、グレーゾーンに平気で不法侵入しちゃうみたいな。
奈槻●そういえば以前、まさきには「グレーゾーンを突きなよ」って言ったことがあったよね。
業界やシステムにはいろんなグレーゾーンがあって、そのグレーゾーンを見つけたら、恥じることなく突っつきなって!
まさき●それは積極的に使っているな~。

FUYUTSUKI-PARTY- 渋谷奈槻

自分が死ぬ瞬間に絶対に思い出す存在

――お互いの尊敬しているところを教えてください。
まさき●う~ん、ひとつには絞れない。何もかも尊敬してきちゃったからな~。
なつきさんは、自分にないものを全て持っている人。常に羨ましいな~って思っているので。
奈槻●まさきは器用だよね。人間関係を作るときも、毛細血管みたいに細かくいろんな人と作っていけるのが凄いよね。

――改めて、お互いの印象を伺ってもいいでしょうか?
まさき●なつきさんは、最初に出会ったときは幼馴染のお兄ちゃんみたいな存在でした。
仕事のときは尊敬する先輩であり、頼れる上司。そして何より“絶対に裏切らない人”。
今はお互いにやることがあるので一緒にいる時間はなかなか作れないけど、いつも影から見守ってくれていると感じています。
奈槻●ありがとう。俺にとってまさきという男は、自分が死ぬ最後の瞬間に“絶対に思い出す人のひとり”。
俺の場合、そう言える相手はなかなかいないので!

――最後に今後の目標を教えてください。
まさき●う~んとね、もっと自由に生きたいかな!
奈槻●なんやそれ(笑)。
まさき●日本一のホストという称号は、自分の中ではすでに横に置いているんですよ。
それに数字なんてものは消耗品だし、どうせホコリを被る。それにあぐらをかく気はないので。
ホストとしてはもう1店舗くらいは増やしたいけど、それ以外でも自由に働きたいな~。
奈槻●俺の場合、夢は結構達成したので、今のところ強い目標はないかな。
ただ、歌舞伎町を自分の街にしたいという気持ちはかすかにあるかも。
今は興味が外の世界に向かっているので、ホストの枠にとらわれず、ホスト以外の仕事もやってみたいと思っているかな。

――ちなみにお二人で達成したい夢はありますか?
奈槻●う~ん、一緒に海外とかで住みたいね。できれば英語圏がいいかな。
まさき●それ、めちゃくちゃ楽しそう! そこで事業を当てて、大金持ちになりそうなイメージしか湧かないわ~。