夏の風物詩といえば怪談。
今夏もMYHOSでは、現役ホストから集めた選りすぐりの恐怖体験記を紹介していきます。
結局、1番恐いのは人間だよね…
「絶対に許さない」
匿名希望
これは私が数年前に体験した話です。
歌舞伎町で居酒屋に行った帰り、ほろ酔いだった私たちは、まだまだ飲み足らず、2軒目を探すことに。
せっかく歌舞伎町に来たんだし、と言う友達に誘われる形で初めてホストクラブへ行きました。
以前指名していたという人が来て、友達は大盛り上がり。
私のところに来てくれた人は穏やかで優しそうな人でした。
ホストってもっとガツガツギラギラしているのかなと思っていたのですが、そんなイメージとは違うおっとりとした姿に安心したのとお酒の酔いも相まって、いつしか私は仕事の悩みやプライベートの悩みまで、洗いざらいその人に打ち明けていたのです。
その人は最後まで優しく話を聞いてくれて、さらに的確なアドバイスをくれました。
それ以降、その人を指名して、頻繁にお店に遊びに行くのにそう時間はかかりませんでした。
その人はホストというよりは学校にいそうな頼れる先輩といった雰囲気で、いつでも優しく話を聞いてくれていました。
そんなある日、彼がホストから引退しようとしていることを聞きました。
本人に「その後はどうするの?」と聞くと柔らかく笑って、その後は「私と結婚したい」と少し恥ずかしそうに言ってくれたのです。
けど、辞めるにはある程度稼いでから、昼職に就きたいとのことだったので、私は最近昇進したばかりの昼の仕事を辞め、夜の仕事1本に絞って彼のために必死に稼ぎ、そんな中、使った額で被りを一掃するという新たな楽しみ方を見つけるほどになりました。
ようやく彼が1位になって、いよいよその時がきたと思っていたある日。
私がファミレスで記入済みの婚姻届をおずおずと差し出すと、彼の表情が一瞬にして冷たいものに変わりました。
そして何か不吉なものでも見るような目で、「やはり結婚はできない。これからまだホストを続けたいから応援してほしい」と言うのです。
そこから先は頭が真っ白になってしまいあまり覚えていませんが、私はパニックになりこれまでの2人の馴れ初めの話、一緒に行ったディズニーの話、プレゼントしてくれたペアリングの話、新居の話、昼職まで辞めてまで尽くしたことなど泣きながらまくし立ててしまいました。
彼はすでに最初に会った時の優しい人ではなく、全く別人になってしまったかと思うほど冷たい表情でただこちらを見下ろしています。
ファミレスの店員さんも駆けつけ、周りのお客さんに見られるのも構わず、私は「どうして嘘をついたの」という内容のことを話したように思います。
彼の返答は「それが仕事だから」の一言のみで、そのまま店を出ていき、こちらを一度も振り返ることはありませんでした。
私が1位にした彼は、現在も現役で働いていて、大きな看板にもなっているようです。
私の人生をめちゃくちゃにした彼を私は一生許さないでしょう。